追悼
芦原妃名子先生が、逝去されました。
「砂時計」で第50回、「Piece」で
第58回小学館漫画賞を受賞され、2017年からは
7年にわたり「姉系プチコミック」で「セクシー田中さん」を
ご執筆いただいておりました。
「セクシー田中さん」の構想を初めて先生から聞いた日のことは、
今でもはっきりと覚えています。
それまでの「砂時計」「Piece」「bread&butter」とは
全く違う奇抜な、でも最高にキャッチーなタイトルだけで、もう虜になりました。
しかも、40歳の地味な女性が主人公で、その素顔はべリーダンサー!?
面白い予感しかしない。
しかし、やはりそれはもちろんただ奇を衒ったものではなく。
かつてご自身が習われていたべリーダンスをモチーフにしたい、
そこで出会った様々な人や価値観、経験を描いてみたい、先生はそう仰いました。
先生は常に作品に誠実に向き合い、想像や思い込みでは決して描かない方でした。
「私、朱里以下だから (笑)」と、ご自身のダンスは観せて頂けませんでしたが、
ダラブッカの腕前は披露してくださり、こちらは触らせてもらっても、
「どうやったらそんな綺麗な音が出るんですか!?」と笙野のように戸惑うばかりでした。
べリーダンスショーもたくさんご一緒させて頂きました。
そんな数々の取材にしつかりと裏付けられた作品は、
無駄なセリフやエピソードはひとつもないほど緻密に組み上げられ、
珠玉のキャラクター達が織りなすコメディに爆笑しつつ、
小さな生きづらさを抱える全ての人に寄り添う優しいメッセージに涙し、
そして徹底的にこだわったダンスシーンの迫力、美しさに息を呑む・・・そんな玉稿でした。
毎回毎回、打ち合わせも校了も楽しくて仕方がなかったです。
柔らかく朗らかなお人柄の中にある、圧倒的な信念と飽くなき探究心。
「セクシー田中さん」以前から、心理学、パン作り、田植え、ポーカーなど
本当に様々なことに常に挑戦しておられました。
美味しいものも大好きで、飲みながらお話ししてくださった
たくさんの楽しい体験談、忘れません。
本当に、先生と一緒に漫画を作れて幸せでした。
芦原先生がお描きになった全ての物語と、そこに込められたメッセージを、
私達は大切に受け継いでいきます。
多大なご功績に最大の敬意と感謝を表しますと共に、心よりご冥福をお祈りいたします。
先生が遺された素晴らしい作品の数々が、
これからも多くの皆様に読み続けられることを願っております。
プチコミック編集部一同
※「セクシー田中さん」は
姉系プチコミック2024年1月号掲載分で終了となります。
今後の情報については、プチコミック・ 姉系プチコミック誌面、
ホームページで随時お知らせいたします。